親権とは、成年に達しない子を監護・教育し、その財産を管理するためにその父母に与えられた身分上及び財産上の権利義務の総称です。
時には、親権を監護権(子供と一緒に暮らし生活全般の面倒をみる権利)と法廷代理権に分けて扱う事もあります。お子さんのいる家庭では離婚に際して親権が1番大きな問題になる事も多いです。当事者間の協議で親権者が決まらなかった場合、調停や審判で親権者を決める事になります。親権者の選定は互いの生活情況や経済状態、子どもへの愛情などで判断されます。
しかしながら子どもが小さい場合は、余程の事がない限り母親が親権者になるケースが殆どです。10歳ほどになれば子どもの意思が尊重されるようになり、15歳以上となれば子ども自身が親権者を選ぶ事ができます。
調停時に別居している場合は、子どもを実際に養育している側が有利となります。この点に注意して行動しましょう。
もし、あなたが父親で年少の子どもの親権がどうしてもほしいという場合、かなり苦しい戦いになる事は必至です。育児放棄や虐待といった母親の子どもに対する重大な過失を証明する証拠が必要になるでしょう。
子どもを引き取る、引き取らないに関わらず、どちらの親にも扶養義務があります。
この為、子どもを養育していない方の親は、子どもが成年、あるいは大学を卒業するまでにかかる生活費や教育費、医療費などの分担分を支払う事になります。このお金を養育費といいます。あくまでも子どもの成長に伴う費用を2人で分担するという事ですので、子どもにかかる費用全てを受け取れるわけではありません。
養育義務については引き取らない方の親だけではなく、引き取る側にも残りますので、養育費で足りない分については引き取った側がまかなう事になります。また、養育費は慰謝料や財産分与などとは性質が異なり、元の配偶者へではなく、子どもへ渡すお金になります。
平均的な収入の場合、子ども1人の場合月に2~4万円、2人の場合は月に4~6万円、3人の場合は5~8万円が養育費の目安となります。
離婚後に、養育者の再婚や子どもの長期入院、進路変更、養育費の支払う側の収入に変化があった場合などは養育費の額を変更する事ができます。これも、両者の協議でまとまらない場合は、家庭裁判所へ調停の申し立てをする事になります。ただ、養育費の支払いについては遅延、未払いなどのトラブルが起こりがちですので注意しましょう。
面接交渉権とは、離婚後に監護者ではない(子供を引き取らなかった)親が、子供と面会したり、一時的に過ごしたりする権利のことです。
民法などの条文に定められた権利ではありませんが、親としては当然に有する権利であり、子供が別れた親に会える権利でもありますので、監護者は一方的には拒否できません。正当な理由無く面接を拒否した場合には親権者・監護者の変更の原因になる事もあります。
離婚後に必ずといっていいほど問題になりますので、離婚条件として具体的な内容まで、十分な話し合いが必要です。
話し合いで決まらなければ、家庭裁判所に面接交渉権の調停を申し立て、家事調停委員などを交えて面接回数、面接方法などを取り決めます。
調停で協議が調わない場合は自動的に審判手続きが開始され、裁判官が審判を下します。
また、法律上の離婚には至らないものの、話し合いがこじれたまま、一方の親が別居し、他方の親と子供を会わせないようにしている場合にも、家庭裁判所に面接交渉権の調停・審判を申し立てることができます。
子供の面接交渉権については、離婚後にトラブルになる場合が多いので、なるべく離婚前に子供との面接の日時、場所、方法など具体的に協議する必要があります。
トラブル防止の為、取り決めた事項を必ず離婚協議書にすることが必要です。
面接交渉権はあくまでも子供の福祉や利益を最優先に考え、親のエゴによる権利の濫用は許されません。
子供を連れ去ろうとしたり、子供や親権者・監護者に暴力を振るう場合などには面接交渉を禁止されることがあります。
子供の面接の際に復縁を迫ったり、金銭の無心をしたり、または子供に過剰な小遣いを与えたり、監護者の悪口を言い聞かせるなど、子供の心理に悪い影響を与えた場合などは、面接交渉権の制限を家庭裁判所に申し立てることができます。また、養育費を支払う能力があるのにもかかわらず、養育費を支払おうとしない親に対しても、子供への愛情に疑問がありますので、面接交渉権が制限される可能性もあります。
面接交渉権の制限は程度によって判断されますが、子供がある年齢になるまで面接を禁止したり、面会時には監護者同伴という制限が付くこともあります。面接交渉権は親だけの権利ではなく、子供の福祉、利益でもありますので、子供の意向も尊重しなければなりません。